過去の出来事

いったい、人間にとって過去というものはふたつの意義をもっているようです。ひとつは過去
のできごとができごととして記憶にとどめられる場合です。そしてそのようなぱあい、過去ので
きごとを過去のできごととして葬りさってしまうか、それとも、いつまでも現在にまで尾をひか
せて、過去を現在にいやおうなしにもちこませるかlこれを決定するのは、過去の事件の性質
であるよりも、むしろその人の性格によっています。

過去のできごとを過去のできごととして、いちおう現在の生活から切りはなして考えることの
できるような人でしたら、過去に一、二度の恋愛があったとしても、それほど真剣に気にやむ必要
はないように思われます。ところで、もうひとつの過去というのは、こういうぱあいなのです。
過去のできごとがその人の現在の行動の仕方を決定しているぱあいなのです。
人間のI男も女もそうですが、行動は小さいときからの習慣やいろいろのできごとによって、
一定の型lパターンーをもつものです。私たちが電車にのるときにも、私たちはそれぞれの
型を示します。たとえば電車にのって電車の入口に立ちどまるか、それとも、まんなかのほうへ
ずんずん進んで入るか、こういう何でもない日常の行動にも、一定のその人その人の型があるも
のです。いいかえれば、私たちの人間のひとつひとつの行動がどういうふうに行われるかという
ことには、過去の原因があるのです。そして、この型というのは、かれこれの習慣よりも、もっ
と根ぶかくもっとひろいものです。もっと意識しない行動の仕方なのです。

参考:
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