これから結婚する女性へ

別れた愛人の思い出
|人間は、男も女も、じぶんのことを薄情きわまる人間だとは考えたがらぬものです。その反対
に、人間はいつでも、じぶんのことを、心の美しい、情愛のこまやかな、むやみに人を愛したり
一愛した人をすぐケロリと忘れたりしない人間だというふうに考えることを好むものです。
別れた愛人を、すぐ忘れてしまうほど薄情な女になりたくない、こういう考えがあなたの心に
巣くってやしませんか。別れた愛人をいつまでも思いきれずにいる、このわたしという女は、と
いつたふうに、あなたじしん、自分のことを美化して鑑賞してやしませんか。(多くのぱあい若い
魂はこういうふうに自分を美化して考えることを好むものです。人間はじぶんを喜劇の主人公と
考えるよりも悲劇の主人公に見たてることをいっそう喜ぶものです。)
出会いのチャンスはここにあります。

それにしても別れた愛人というものは悲しいものです。なつかしいものです。なかなか思いき
一れないものです。たしか宇野千代さんでしたか、そういう時には泣きたいだけ泣くがいい、涙こ
そいっさいを洗い流すだろうと書いておられましたが、まったくあなたも二カ月くらい、ただも
う泣いて泣いて暮したほうがいいのかもしれません。そして涙の分量が日ましに少なくなってい
るのに気がついたとしたら、もうきっぱりと泣くのはやめなさい。子供が泣いているぱあいと同
じように。人間は泣くのをやめるやめ際が大切です。グズグズといつまでも長泣き、思いだし泣
きをしないで、ピタリとある瞬間から泣くのをやめなさいIそれができるくらいなら、
わたしはこんなに悩みはしない、あなたはこういわれるだろうと思います。
そこでピタリと泣きやむにこほとは、愛人の思い出を心の底深く、美しい思い出として、小筥におさめたように、かこってしまう
のです。美しい思い出として。わたし、あの時あんなにも愛されたのだから。あの思い出はわたしの一生の宝だわ、
これだけの思い出を与えられた私は、何も与えられなかったぱあいよりどんなによかったかIこう考えられませんか。

出典:
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One Response

  1. Mr WordPress
    Mr WordPress 2014年5月20日 at 7:25 AM |

    これはコメントです。
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